債務整理問題の課題
可能であればユーザーからのヒアリングを行うことも有効である。
③[ポイント3]「当面の資金繰り計画のチェック」・・・申込会社に月次、日次の資金繰り計画を作成してもらい、貸手サイドからチェックする。
これにより当面のDIPファイナンスの必要金額を算定するDIPファイナンスの必要資金が、担保等のセキュリティ・パッケージでカバーされる範囲のものかどうかもチェックすることが必要となる。
また、法的手続進捗下では資金繰りも当初想定と異なる要素が多いので、申込会社には保守的に資金管理をしてもらうのはもちろん、融資後もこまめに資金繰りについての報告を受けてモニタリングすることが必要になる。
④[ポイント4]「回収の方向性の検討」:事業再生の過程においてDIPファイナンスによる貸付金がどのように回収(Exit)されるかという方向性について検討を加えることが必要である。
Exitの方向としては、いくつかのパターンが考えられる。
(i)営業力の回復による返済余資からの回収:業績回復による収入増のみで短期間でDIP貸付金を返済できるようなケースはまれであろうが、一定の返済原資の確保は可能となる。
(ii)信用力回復による仕入れサイトの改善による回収:法的申立直後は信用力の著しい低下から仕入れ資金の決済はきわめて短期化する(現金払いや旬払い)が、その後の営業継続により仕入れ先からの信用が回復した場合、仕入れサイトが従来の期間に戻るケースがある。
この場合には、DIP貸付金への返済余力が生ずる。
GiD新スポンサーによる増資資金等により回収:新スポンサーの増資資金によりDIP貸付金を回収するか、新スポンサーによる信用力の回復に着目した他の金融機関からのリファイナンス資金により回収する。
(i)~(iii)のどのパターンになるかは申込企業の業種特性や再生のパターンによって区々であろうが、どの可能性が最も高いかは想定しておく必要がある。
また、これら回収シナリオを念頭に置きつつ、貸付契約書に盛り込むべきコペナンツの調整も行わなければならない。
一般的にはDIPファイナンスの金利は相対的に高めの金利を設定するが、これは返済余力が発生した場合になるべく返済を促進させたいとのExit戦略の一環でもある。
一方、現実には厳しい時間制約のもとでDIPファイナンスを検討する過程において、(i)ーfiaの回収シナリオのいずれかについて確定的な心証を形成することはむずかしいし、逆にいえば(i)ー(iii)のいずれかについて確定的な心証を形成するまでDIPファイナンスを実行しないのであれば、それまでに二次破綻が現実のものになってしまう危険性が高い。
したがって、後述する債権保全のところで触れるが、実務上は(iv)担保(保証)実行による回収も最終的なシナリオとして考えておくべきであり、担保実行による回収の可能性を念頭に置いた担保設定を図るべきである。
(「十分な債権保全による償還確実性の確認」第一に、当該DIP貸付金が、法的手続のなかで既存債権に優先して返済を受けられる共益債権となることが必要である。
共益債権化するためには、民事再生法の場合には、監督委員の同意が必要となるし、会社更生法の場合には裁判所の許可が必要である。
なお、担保提供についても、同様の手続が必要になる。
共益債権化を行えば、再生手続や更生手続が進んでいる限りは既存債権に対して優先返済性を保証されることになる。
ただし、DIP貸付金は申立て後発生した仕入債務など他の共益債権とは同順位であるし、民事再生手続においては既存債権者の別除権行使に劣後することには留意する必要がある。
第二に、破産手続に移行した場合などに備えて担保・保証による債権保全を図ることが必要になる。
通常、法的手続を申立てる企業の不動産等の一般的な資産には既存債権者による担保設定が行われているので、DIPファイナンスの担保としては営業継続により発生する売掛債権・受取手形が考えられる。
もし、DIPファイナンスの時点ですでにスポンサーとして名乗りをあげている企業があれば、スポンサーからの保証も交渉してみるべきであろう。
米国のようにスーパープライオリティ(他のすべての共益債権に優先する地位)やプライミングリーエン(裁判所の許可を得て既存担保権のついている担保物件に対し、先順位または同順位の担保権を設定することができること)が認められていない以上、わが国おけるDIPファイナンスの実務上は、適切な担保・保証スキームの設定ができるかどうかが重要な点である。
なお、DIPファイナンスについては共益債権化が図られていれば、破産手続に移行した場合には破産財団からの返済が可能になるので、必ずしも担保による保全は必要でないとの見解も&.る。
この見解は、監督委員、管財人、裁判所は破産など清算手続に移行する場合にも共益債権が全額返済されるべく実務上のコントロールをしているし、破産裁判所や破産管財人がDIPファイナンスの返済などについては実務上一定配慮をするはずであるという事実認識に基づいている。
しかし、貸付判断時点で破産財団からの回収可能性を計数的に把握することはむずかしいし、財団債権としての回収をするには、それなりの手続時間を要することを勘案すれば、一般的には担保・保証が必要になると思われる。
無担保・無保証ないしは不十分な担保にて貸付実行する場合は、DIP貸付金以外の共益債権の状況についてのよりきめ細かいモニタリングが必要となろう。
(⇒「適切な情報開示および利害関係者の意向の確認及び経営責任と株主責任の明確化」①適切な情報開示・・・法的整理下に入った企業は裁判所に対しては一定の情報開示が義務づけられているものの、既存債権者に対しては十分な情報開示が行われていないケースが散見される。
これは、破綻に至るまでの感情的なこじれに基づく場合もあれば、既存債権者との調整は法律家にまかせておけばよいという安易な思込みに基づく場合もあるDIPファイナンスが事業の再生を目的とするものである以上、DIPの貸手も申込会社に対して、既存債権者が再生計画や更生計画の諾否の権利を有していることの再認識を促し、既存債権者への適切な情報開示こそが、信頼感の回復と再生計画・更生計画への円滑な協力とりつけのために重要であることを納得させる必要がある。
また、DIPフアイナスの貸手も適切な情報開示を得てモニタリングすることは重要であり、融資契約において、再生計画の帰趨に影響を与える事項や資金繰り、営業情報について適時情報提供すること等を申込会社に義務づけなければならない。
②利害関係者の意向確認・:DIPファイナンスを行うにあたっては、利害関係者の意向の確認が必要である。
利害関係者としては既存債権者、取引先などが考えられるが、主要な既存債権者、特に従来のメインバンクの意向は重要である。
そもそも主要な既存債権者がすでに企業の清算を念頭に置いている場合には、事後の再建の見込みは立たない。
また、理念的にみると破綻企業は債務超過に陥っているのが通常であり、株主の権利はゼロ評価となっており、代わって債権者がステーク・ホルダーとして前面に出てきている状態となっている。
つまり、再生手続における従来の経営者(DebtorInPossession)は、理念的にはすでに株主のエージェントとして執務しているわけではなく、既存債権者を中心とする利害関係者のために執務を執行している埋草であり、これは更生手続における管財人の場合と同様である。
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